里見の謎

ハード PS
ジャンル RPG
開発元 サンテックジャパン
発売元 サンテックジャパン
発売時期 1996年12月6日
クソゲー度
電波度
容量 261MB

PS史上最凶のRPG

プレイステーションと言えば相当な数のソフトがリリースされていますが、その中でも最凶のクソゲーと言えば里見の謎が真っ先に挙げられます。 SFCで最凶のクソゲーである摩訶摩訶とは違いバグ塗れというわけではありませんが、とにかく電波っぷりが凄い。シナリオは当たり前ですがシステムまで電波です。

しかもこのゲームはプレイする前から既に強烈な仕掛けを一つ用意しています。パッケージに「オススメRPG」というステッカーが貼ってあるのですが、これはメーカー自ら貼って出荷したものです。 ちなみに筆者は中古で購入したのですが、CDだけの状態だったので残念ながら実物を見たことはありません。

一般人にプレイさせると「あたまが ヘンになっちゃったよぉ」状態になりかねない危険なこの作品を今回はご紹介致します。

一体何がしたかったのか分からないシステムの群れ

このゲームには特徴的なシステムがそれなりに用意されています。それらのシステムもまた相当アレな出来なので、紹介していきたいと思います。

まずはPMLS(プログレッシヴマップリンクシステム)。なんか大それたネーミングですが、その実態は「縦スクロール以外のマップ移動がない」という従来のシステムを退化させたもの。 一体どうしてそれを語呂の悪い略称まで用意して前面に出すのか理解できません。
但し、常に↑方向に進むのが正解なので、やけにこった迷路を沢山用意しやがるクソゲーに比べればサクサク進めるのでありがたいと言えばありがたいシステムです。中盤に横スクロールもありましたが。

次にDCBS(ダイレクトコマンドバトルシステム)。敵との戦闘時、敵毎に○、△、□のボタンが割り振られていて、それを押すことでコマンド選択一切無しで瞬時に攻撃を仕掛けられるシステム。 これだけだとシステムって言うほどではありませんが、戦闘自体がかなりスピードを重視して作られているため、それを総称すればシステムって言ってもいいのかもしれません。
攻撃する度にパパッと次の行動を選択できるし、敵の攻撃もほとんどエフェクト無しなのでかなりスピーディーな戦闘が展開されます。よく考えたらただの手抜きですね。 更にスピードを重視した結果、「○○は××ポイントのダメージを与えた!」みたいなメッセージどころかダメージ表記がそもそも消えました。 なので、攻撃しても敵にどの程度のダメージを与えているかは一切不明。スピーディーなのはいいんですが、ユーザビリティが欠如しています。
しかもこのシステムには致命的なバグがあります。なんと攻撃する際に○、△、□を同時押しすると一切のデメリット無しで全体攻撃できます。 ダメージの減少無し、MP消費も同じという酷い有様。でもこれのお陰でスピーディーな……そういう問題じゃねぇよ。

※後に得た情報によると、全体攻撃した場合はダメージ量が減っているらしいです。申し訳ございません。しかしダメージ表記がないので検証しないと分からないつくりの方に問題があると思います(責任転嫁)

そしてFECS(フラッシュ・エンカウント・コントロール・システム)。戦闘画面のローディングが恐ろしく短くエンカウント後即座に戦闘に移行します。
実際、ほとんど読み込み無しで戦闘に移行するのでよく出来たシステムと言えます。これの為に必要なものさえ削ぎ落としたのかもしれませんが、唯一成功したシステムと言えましょう。
ちなみにこのシステムはかの有名な「ドラゴンクエストIIV」でも採用されましたが、あちらはこのゲームみたいに戦闘が簡素ではないのでこのシステムの運用が上手くいかずフリーズを多発させましたが、このゲームでは一切の障害はありません。 つまり強引に言えば里見の謎は天下のドラクエよりも技術力を駆使して作られていると言えます。すごいぜ里見の謎!

他にも、このゲームには経験値が存在せず、敵に攻撃する度に攻撃の種類(攻撃、道具、魔法)に応じて熟練度(みたいなもの)が溜まっていき、それによってパワーアップします。そしてレベルの代わりに「なりわい」という、称号みたいなものが変化していきます。
しかし序盤〜中盤にかけては相手が強かろうが弱かろうが、一回につき1ポイントしか溜まらないので、レベル上げは極限まで防御力を高めて弱い攻撃を繰り返すのが良いというよく分からない状態になっています。しかも終盤でも一回につきせいぜい3ポイントなので大して変わりません。
オマケに序盤の「なりわい」は「よわむし」「ざこ」「したっぱ」「じゃくしゃ」「どしろうと」「えんじ」「しょういち」と、いくら弱いからって散々なものばかりです。というか魔法系のなりわいの「えんじ」「しょういち」ってどういう基準ですか。
更に一体につき1ポイントなので、○△□同時押しで全体攻撃すると1回で3ポイント入ります。

更に戦闘中に回復アイテムを使う際、なんと使うアイテムが選択できません。状況に応じて勝手に判断されたアイテムが勝手に選ばれます(変更不可)
お陰で「HPを回復したいのにMP回復アイテムしか使えない」「HPを100回復したいのにHP5しか回復しないアイテムしか使えない」というとんでもない状況がしょっちゅう引き起こされます。 よって要らないアイテムは戦闘前にさっさと使うか捨てるかしないと後が大変です。

最後にもう一つ。このゲームは主人公のゆめわか、友人のようすけ、愛犬のラブリーの三人は名前を変えることができます。主人公とラブリーは最初から最後までいるのでいいのですが、 ようすけは序盤に行方不明になった後、とあるダンジョンで一時的に再会するだけなのになんで名前を変えられる対象になっているのかよく分かりません。
その際に「じどう」というコマンドがあるのですが、普通はデフォルトの名前が幾つか用意してあるのに対し、このゲームは文字を完全にランダムで選択するだけです。 なので「ぴむょーぢ」「ぅょぬっっ」とか発音不能な名前が出てくることがあります(ちなみに例の2つは実際に出てきた名前)
しかしこれは別なゲームでも見たことがある(ような気がする)のでそこまで変だとは思わなかったのですが、じどうを選択したらランダムな文字が一文字ずつしか出てこない所が一番アレだと思いました。 要するに5文字付けたい場合はじどうを5回選択する必要があります。

とまぁ、システムの紹介だけで大分長くなってしまいましたがそれくらいシステムもイカレてしまっています。ていうかPMLSはシステムって言いません。 この時点で大半のゲーマーは「遠慮しておきます」と言いたくなりますね。寧ろやりたくなった人はよく訓練されたクソゲーマーと言えましょう。

※このゲームがどうしてFECSを導入できたのか検証してみたら、なんとマップでの動作はマップ移動以外はCDを読み込んですらいないことが判明。 移動した後にCDカバーを開けっ放しにしてもそのままプレイできます。普通のRPGは戦闘の度に読み込みを行うので、この辺がミソですかね。

電波全開!理解不能の里見ワールド!

システム見ただけでもおなかいっぱいなのに、それ以上にヤバいのが理解不能なシナリオ。電波っぷりは他の追随を許しません。
簡単な概説要を明すると「ヌーヌーと言うカルト宗教が人々を洗脳して世界を支配しようとしているのでぶっ潰す」という感じです。ずんずん教並に危険な臭いが……。
しかし主人公は実は過去(江戸時代?)から来たどっかえらい家系の息子だとか、その江戸時代にもヌーヌーがいるとか云々とよく分かりませんが物語の大半は江戸時代で過ごすことになります。 突っ込みどころは死ぬほどあります。全部は無理ですができるだけ突っ込んでみましょう。


■あたまが ヘンになっちゃったよぉ

ゲーム開始時、夢若とようすけが釣りをしています。そこで夢若が変な壺を釣るのですが、それを拾ってから帰宅するまでに主人公は周りの景色が歪んで見えたり、誰かの声が聞こえてくるようになります。
そして帰宅後に母親に言った一言……それが「母さん・・・ぼく あたまが ヘンになっちゃったよぉ」

全てはこの一言から始まります。このセリフの後の怒涛の展開に、いつしかプレイヤーまでもが「母さん・・・ぼく あたまが ヘンになっちゃったよぉ」と呟き始めるのでした。


■イズミとの出会い

このゲームにはイズミとサヤという二人のヒロインがいます。ゲーム開始時にどちらかを選択しますが、私はイズミを選んだのに、イズミは序盤で抜けて入れ替わりで仲間になったサヤが最後まで居座っており、ラスボス戦でようやくイズミが戻ってくるという有様なので多分どっちを選んでも内容はほとんど変わりません。
ラスボス戦で戻って来たイズミは多少レベルの底上げはされているものの、ハッキリ言ってかなり弱いので、終盤までずっと一緒にいるサヤを選んだ方が明らかに有利です。
で、そのイズミとの出会いのシーンがあまりに印象的だったので紹介します。

イズミは図書館のコンピュータ室にいます。コンピュータを操作していると、隣の席にいたイズミが突然「ちょっとあんた!この部屋では始めて見る顔だね。私に何の挨拶もないで、カタカタカタカタ、キーボード叩いてるんじゃないわよ!」と絡んできます。まるでヤクザです。
しかもその後「ちょっと顔貸せよ!」と脅し「山の麓に来ないと欲しがっているデータは渡さない」と言い放ちます。そして麓に行くと「いつまで待たすつもりなの!あんたちょっと生意気なのよ!覚悟しな!」と言って襲ってきます……訂正、まるでヤクザじゃなくてヤクザそのものでした。

倒すと何故か仲間になるわけですが、こんないきなり初対面の相手に因縁つけて襲ってくるヒロインなんか仲間にしたくありません。しかも装備を見ると武器は「とんかち」なので、さっきの戦闘ではとんかち持って襲って来たことになります。怖ぇよ。


■おれは ゆめわかだ!

江戸時代にタイムスリップ直後。街の人々は時代にそぐわないおかしな格好をしている夢若一向を避けます。そしてとうとう兵士に捕まってしまいます。
牢屋にぶち込まれた夢若一向。その時、夢若が発した一言……それが「なにをする! ここからだせ! おれは ゆめわかだ!態度でか過ぎ。
ちなみにこのセリフは、この国には行方不明になっている夢若という若君がいるという設定の上での発言なので、そう考えればおかしくありません。そう考えてもやっぱり態度はでかいけど。 しかしこの時点ではそんな話一切出て来ていないので、やはり夢若の尋常ではない態度のでかさから来た発言と考えるのが妥当でしょう。

この後、夢若だと分かるや否や街の人々は急に態度を変えて夢若をちやほやし始めます。そして「キャーッ!うわさの ゆめわかさま!サインしてください!」と言ってくる娘もいますが……あれ、江戸時代だよね?


■矛盾の嵐

とある中ボスの発言。
「こうして毎日お供え物を食えりゃあ、言うことねえな!海の神様も、お怒りのことだろうなぁ!ひゃっひゃっひゃ!まぁ一杯やらんか?」選択肢が出るので、 「はい」を選ぶと「お前らにやる酒などないわ!」と言われ戦闘に。最初から誘うなよ。

別な中ボスの発言。
「団子やるから帰んな!」選択が出るので、「はい」を選ぶと「タダで帰るんじゃねぇ!小僧!」と言われ戦闘に。お前がよこしたんだろうが。しかもアイテムに団子は増えていないので実は貰ってすらいません。

とある墓石に書いてある言葉。
「海へ漁に出たきり行方知れずの漁師。ここに眠る。享年46才」……ここに眠ってるってことは行方知れてるじゃねーか!
更に「財宝を捜し求めて旅立ち帰らぬ若者ここに眠る。享年20才」「穴掘りに出稼ぎに行ったまま行方知れずの者ここに眠る。享年35才。」もあります。


■ゲーム中でも最高に意味の分からない場面

とある城主がヌーヌーの連中に捕らえられており、それを助けます。すると城主が礼を述べた後に「ヌーのウー(ヌーヌーの幹部?の一人、ウーのこと)は妙な奴です!心して掛からないと大変な目に遭います!」と言ってきます。

その後、突然飛んでくる馬。そして「おんまちゃんでちゅ!…乗りますか?」 ……何でしょうこれ。とりあえず「はい」を選択すると「そんなにいっぱい乗れまちぇん!いっぱいとは沢山のことで、おっぱいではなぁーい!ヒヒひーん!」

( ゚Д゚)

再び「おんまちゃんごっこちよーよ?」と言われるので、再び「はい」を選択します。
すると「後に付いておいで!」と言われ少し移動した後、「ウーちゃん ぽんぽん痛い!」と発言した後に「すごくくさいばふんがあらわれた!」と出て、すごくくさいばふんというモンスターとの戦闘になります。

( Д) ゚ ゚

その後「ひひーん!ウーちゃん おんまちゃんごっこ、あきたぁー!」と馬が言った後、突然馬が変身して正体を現し、ボス戦になります。

……誰か、一体何がどうなっているのか説明して下さい。


■高所恐怖症の忍者

別な大陸に移動しなくてはならなくなった時、巨大大砲で飛ぶという曲芸みたいな方法で移動することになるのですが……そこで仲間の一人、忍者であるジュウベーが言った一言。
「せ・せっ・・・せっしゃ・・たかいとこは・・・・・にがてで ござる!」しかもこの後、代わりに来たQ坊が仲間に入り、ジュウベーは二度と戻って来ません。高所恐怖症を理由に抜ける忍者なんて前代未聞です。

そもそも、ここは日本なので北の”大陸”に移動したということは恐らくユーラシア大陸に移動することになるのが自然ですが、着いた場所は「センノクラ」という、どう見ても日本人しかいない街。北の”大陸”ではないですね。
里見の国って言っていることは恐らく舞台は房総地方なので、もしかしたら北海道(蝦夷)のことを北の大陸と言っているのかもしれませんが……雰囲気的に考えてどう見ても北海道ではありません。


■鯨に乗った少年、ようすけ

序盤で行方不明になるようすけですが、途中から復活します……鯨に乗って。 どうやら津波にさらわれた時にその鯨に助けられたらしいのですが、その鯨のことを「いのちの おんげい」と言います。
……いや、恩鯨であってアッー!の方じゃないのは分かっていますが、平仮名なのでどうしても先にアッチが思い浮かんでしまいます。

更に色々あってようすけの居た島に戻った時。島の人々は「鯨を操る者は神の使い」とかそんな言い伝えを信じていて、ようすけを崇拝していたらしいです。 実際、島に残るつもりであることも住人の発言から読み取れます。
しかしようすけに話しかけるといきなり「というわけだよ! ゆめわか! オレは ここに のこることにした!」と言います。 いきなり「というわけだよ!」と言われても、予め島の住人に話しかけていなかった人にとっては「どういうわけだよ!?」になりますがな。


■その他細かい突っ込みどころ(※ほんの一部)


というわけで電波全開です。本当はもっと色々突っ込むところがあるんですが、キリがないのでこの辺で切り上げておきます。プレイ中は本当に「!?」の嵐でした。

期待の新人、島紘子

里見の謎を語る上で絶対に外せないのが島紘子(当時17際の芸能学校の生徒) 彼女は本作のOP・EDのナレーション、挿入歌2曲の歌を担当しています。クソゲーのくせに挿入歌が2曲もあります。
挿入歌は歌の出来自体はよく島紘子の歌も上手いのですが、このゲームがあまりにチープ過ぎることと流れるタイミングが意味不明なので、突然ボーカル付きの歌が流れてきても笑いの種にしかなりません。
特にラスボス戦で流れる「流星のティアラ」はラスボスがあまりに弱すぎるので、ヘタするとイントロだけで戦闘が終わってしまいます。 しかもラスボスが超が付く醜さとチープさなので曲が台無しです。ちなみに曲は80年代のロボットアニメのOP臭全開でダサかっこいいです。

更にこのゲームはCDプレイヤーで再生すると特殊な警告メッセージが流れます。PCエンジンや他のPSのゲームでもよくある遊び要素ですが、このゲームの場合はちょっと事情が異なります。
内容は島紘子の自己紹介、所属していた芸能学校の宣伝、更にゲーム中の挿入歌2曲が中途半端なタイミングで切れて途中まで聴けます。この内容が約9分もあり、物凄い容量の無駄遣いです。
更に驚くことなかれ。このゲーム、CD-ROMですがPCなどで読み込んでみると使用している容量はたったの261MBしかないことが判明します。つまりCD-ROMの容量の半分も使っていません。 そのうち警告メッセージの容量は87.9MB……なんと警告メッセージが容量の約1/3も使用しています。本当にマトモな箇所ないんですかこのゲーム。

更に調査してわかったこと……このゲームのシナリオライターでありサンテックジャパンの社長である人物の名は小澤夢生氏。 沖縄タレントアカデミーの校長の名は小澤公平氏……なるほど、この二人兄弟ですか。島紘子の起用はこんな繋がりがあったわけですね。
この記事を書いた当事(2008年前後)は調べてもこの御二方が兄弟であることくらいしか分からなかったのですが、今は調べるとかなり詳細な情報が出てくるので興味のある方は調べてみると良いかもしれません。

ちなみにその島紘子はなんと仲間由紀恵の同期だったらしいです(しかも親友だったとか) 一方は今や有名女優、片や今何しているのかも分からない……島紘子が不憫でなりません。

一体どうしたらここまでクソゲーにできるのか……。

そんなわけで里見の謎、期待以上のクソゲーでした。なんというか、ここまでクソゲーなのは久しぶりだったので大いに満足しました。 しかしあまりにクソゲーだったので暫くクソゲーやりたくなくなりました。
クソゲー過ぎてかなり堪えるので、よく訓練されたクソゲーマーにこそお勧めしたいゲーム。摩訶摩訶同様、非常に危険な代物ですのでお子様の手の触れない場所に置いて下さい。

ちなみにサンテックジャパン製のゲームには他にも「10101〜“WILL”The Starship〜」というPSのゲームがあり、こちらも相当なクソゲーらしいです。此方でもまた島紘子の挿入歌があるようで。可哀想に。見つけたら入手したいところ。
他にもサンテックジャパンのエロゲー部門であるK'night、Studio TAKOから何本か作品がリリースされております。それも今調べると色々出てきますが、内情はなかなか凄まじいものだったようで。
そしてサンテックジャパンは案の定2004年に倒産してしまったようです。そんなことより島紘子が現在どうなっているかが一番気になります。

一応これでも必要以上に扱き下ろさないように気を使って書いたつもりなのですが、この記事だけで何回クソゲーって書いたか分かりません。 クソゲーという言葉には決して悪い意味だけが込められているわけではないので、どうかお許し下さい。


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